上部消化管内視鏡検査(胃部内視鏡、胃カメラ)
逆流性食道炎、胃炎、胃潰瘍、胃がん、胃ポリープ、十二指腸潰瘍などの病気の発見に有用です。
要精密検査(D判定)は消化器内科または胃腸科外来を受診して下さい。要観察(C判定)で無症状であれば、年に一度の定期的な経過観察を継続して下さい。
B判定は日常生活に差し支えありません。
食道
異所性胃粘膜 | 食道粘膜の一部に胃粘膜がみられることがあります。 多くは先天的なもので、数%の人に認められ、頸部食道(食道入口すぐのところ)にみられることがほとんどです。内視鏡では正常食道粘膜が類円形に剥がれたように見えます。多くの場合、胃粘膜の働きはしていませんので、治療や経過観察は不要と考えられています。 |
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カンジダ性食道炎 | 食道感染症の中で最も多いもので、真菌(カビ)の一種であるカンジダが食道粘膜に侵入した状態です。 免疫力低下、過剰な糖摂取などが原因となります。 気管支喘息治療で吸入薬を使用している場合に認められることがあります。経過観察が必要です。 |
逆流性食道炎 | 胃内容物(多くは胃酸)の逆流により、食道胃接合部や食道下部にびらんなどの粘膜傷害が認められます。 ピロリ菌に感染していない人では胃酸分泌が保持されますので、ピロリ菌未感染者での発生頻度が高くなっています。 また、食道裂孔ヘルニアなどにより一過性に下部食道括約筋圧が低下することも大きな要因と考えられています。 主な症状は胸やけや呑酸ですが、喉の違和感、咳(せき)、胸痛などが出現することもあります。 治療としては、プロトンポンプ阻害薬等が有効です。 生活習慣では脂肪食、アルコール類、甘いもの、炭酸飲料、辛い物、コーヒーの取りすぎに注意しましょう。 肥満、暴飲暴食、寝る直前の食事摂取があれば改善しましょう。 |
グライコジェニック ・アカントーシス |
内視鏡で食道粘膜に白色調の粒状物を認めることが少なからずあります。 グリコーゲンに富んだ顆粒であり、ヨード染色すると濃く染まります。腫瘍ではなく、放置してもよい所見です。 |
食道静脈瘤 | 食道粘膜の静脈がこぶのように膨れ、でこぼこになった状態で、多くは食道胃接合部から口側に向けて進展します。 その原因の大部分は肝硬変症による門脈圧亢進症です。食道静脈瘤により食物の通過障害を来たすことは稀ですが、進行すると破裂して大出血を来たすことがあります。 治療法としては、内視鏡を用いた硬化療法・静脈瘤結紮術や経皮経肝的塞栓術、経皮的肝内門脈静脈短絡術、外科手術などがあります。 |
食道乳頭腫 | 通常食道内腔は扁平上皮という粘膜に被われていますが、この扁平上皮が増殖・隆起してできたポリープが乳頭腫です。 中下部食道に多くみられる良性腫瘍です。放置してもよい所見です。 |
食道裂孔ヘルニア | 横隔膜には食道が通るための穴があり、これを食道裂孔といいます。 胃の一部がこの裂孔から胸部へと脱出してしまった状態が食道裂孔ヘルニアです。 原因としては加齢や肥満、背中が曲がった方などがあります。 ヘルニアが起こると横隔膜による締め付けが弱くなり、胃の内容物が逆流して逆流性食道炎を起こしやすくなります。 ほとんどの場合、放置してもよい所見です。 |
バレット食道 | 下部食道の扁平上皮が胃粘膜に近い円柱上皮に置き換わった状態をバレット食道といいます。 逆流性食道炎が主な原因とされています。欧米では食道腺癌(バレット腺癌)の前癌状態と考えられています。 軽度の場合は放置しても差し支えありませんが、経過観察が必要になることもあります。 |
胃
胃アニサキス症 | アニサキスという寄生虫により、イカ、サバなどの摂取後に急激な心窩部痛で発症します。 アニサキス虫体が粘膜に刺入して、同部位は浮腫、発赤、びらんを形成します。アニサキスを摘出する治療が必要です。 |
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胃潰瘍 | 胃酸の影響を受けて胃の粘膜に欠損が生じた状態を潰瘍といい、潰瘍が完全に治癒し粘膜欠損が修復された状態を潰瘍瘢痕といいます。 ピロリ菌の感染と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が2大病因であるといわれています。 また、ストレスも肉体的ストレス、精神的ストレスを問わず潰瘍の原因となります。 ピロリ菌による胃潰瘍では、除菌治療により再発抑制が可能です。 |
胃潰瘍瘢痕 | 胃潰瘍が治癒し粘膜欠損が修復された状態です。 |
胃過形成性ポリープ | 消化管の内腔を覆う粘膜の一部が隆起したもので、正常粘膜が単に厚くなったものが過形成性ポリープです。 ほとんどのものは経過観察で問題ありませんが、大きなものからは稀に癌ができることがあり、精密検査が必要となります。 ピロリ菌による胃の慢性炎症がその発生に関係していると考えられており、ピロリ菌除菌治療でポリープが小さくなることもあります。 |
胃憩室 | 管腔の一部が洞穴状に陥凹したものです。放置してもよく、治療の必要はありません。 |
萎縮性胃炎 | 主にピロリ菌の感染によって引き起こされる胃炎を指します。進行すると内視鏡検査で粘膜下の血管が透けてみえるようになります。 大部分の方は無症状ですが、軽度の消化不良または胃もたれや膨満感などの症状を呈することがあります。 高度の萎縮性胃炎は胃癌発生リスクが高く、定期的な内視鏡検査が必要です。 また、ピロリ菌除菌治療により胃癌発生リスクが低下することが期待されています。 |
胃底腺ポリープ | 消化管の内腔を覆う粘膜の一部が隆起したものです。周囲の粘膜と同じ色調をしており、しばしば数個以上みられます。 ピロリ菌のいない胃に発生することが多く、癌化することもないので、経過観察は不要といわれています。 |
胃粘膜下腫瘍 | 胃の粘膜層よりも深い胃壁内(粘膜下層、筋層、漿膜下層など)に発生した病変です。 胃粘膜下腫瘍の多くは腫瘍性ですが、非腫瘍性の疾患も含まれています。 また、病変は良悪性いずれの場合もあります。経過観察または精密検査が必要です。 |
キサントーマ (黄色腫) |
わずかに隆起する境界明瞭な白色から黄色調の病変です。 星芒状から類縁形まで形はさまざまを呈します。ピロリ菌感染との関係があるとされています。 キサントーマ自体は放置してもよく、治療の必要はありません。 |
表層性胃炎 | 慢性胃炎の一つで胃の粘膜の表面のみが軽く炎症を起こしている状態です。 暴飲暴食、過労、ストレス、喫煙、香辛料などの刺激物が影響していることもあります。 |
腸上皮化生 | 萎縮の進展に伴い胃粘膜が腸上皮類似の上皮に置き換わった状態です。 胃癌(特に分化型胃癌)の発生母地と考えられ、内視鏡による経過観察が必要です。 |
(平坦型) びらん性胃炎 |
数ミリ大の発赤を伴うびらんが多発します。中央部は陥凹し、白苔を伴うこともあります。 単発性で不整形の場合、癌との鑑別が必要です。経過観察または精密検査が必要です。 |
壁外性圧排所見 | 円周回臓器により胃壁外から圧排され変形することです。 体部では、腸管拡張、肝臓・膵臓(嚢胞・腫瘍など)により圧排所見を認めることがあります。原因を調べる精密検査が必要です。 |
迷入膵 | 粘膜下腫瘍の一つであり、前庭部(胃の出口付近)に認められることが多いです。 粘膜下層中心に腺房細胞、ランゲルハンス島などの膵組織を認めます。 中心陥凹を伴うことが多いです。放置してもよく、治療の必要はありません。 |
隆起型びらん性胃炎 (タコイボびらん) |
いわゆる’タコイボびらん’で、ポリープ状、棍棒状、数珠状などの形態を取ることがあり、ほとんどは多発しますが、単発のこともあります。 さらに白色陥凹を中心部に伴うことが多いです。単発性で不整形の場合、癌との鑑別が必要です。 ピロリ菌末感染者にみられることが多いですが、感染者にみられることもあります。 |
十二指腸
異所性胃粘膜 胃上皮化生 |
十二指腸に胃の粘膜がみられる状態です。異所性胃粘膜は球部にみられる丈の低い隆起性病変で、先天性病変です。 胃上皮化生は、炎症や潰瘍などで、生体防御的に発生したものです。いずれも病的な意義は少なく、放置しても差し支えありません。 |
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十二指腸炎・びらん | 十二指腸に炎症がおこった状態です。 原因不明の非特異性十二指腸炎と、アルコール、香辛料、薬剤、放射線、細菌・ウイルス感染症、全身疾患、ストレスなどが原因の特異性十二指腸炎があります。 炎症が軽度の場合は放置しても差し支えありませんが、炎症がひどい場合は経過観察や内服治療が必要です。 |
十二指腸潰瘍 | 十二指腸の粘膜に欠損が生じた状態です。原因は主にピロリ菌感染であり、その他に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などがあります。 ピロリ菌除菌治療により、潰瘍の再発はほとんどなくなります。 |
十二指腸潰瘍瘢痕 | 十二指腸潰瘍が治癒した状態です。 |
十二指腸憩室 | 十二指腸壁の一部が、外側に突出して、へこんだ状態です。 下行部、十二指腸乳頭近傍に多くみられます(傍乳頭憩室)。 |
粘膜下腫瘍 | 十二指腸の壁内に発生した腫瘍です。20mm未満のものは経過観察とします。 |
Brunner 腺腫・過形成 | 十二指腸球部に好発する隆起で、粘膜下腫瘍の形態をとることが多く、稀に癌化することがあります。 Brunner腺過形成は、異型のない Brunner腺が増殖したものです。経過観察または 精密検査が必要です。 |
上記以外の所見については、「日本人間ドック学会ホームページ」→「一般のみなさんへ」→「人間ドックの検査項目→「上部消化管内視鏡」をご参照下さい。